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第13回 「里山(前半):自然と人間の関わり方を考える


1.はじめに
2.議事録
3.参加者の感想

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1.はじめに
2003年7月19日、東京・三田で、和散歩・趣き深き会 第13回「里山(前半):自然と人間の関わり方を考える」を開催しました(参加者22名)。これは、その議事録と参加者の感想です。

およそ、1年半前。日本文化を考える「和散歩」を立ち上げようとしていた私に、今回のゲスト渡辺pacoさんはこういいました。

「日本文化の中心は里山だよね」

さとやま?何、里山って?頭の中に?マークが一杯浮かびました。それから、私はpacoさんに多くのことを教えてもらったのです。そして、思いました。

「このテーマこそ、まさに私が和散歩でやりたいもの!」

私たちが一度は見たことのある田園風景「里山」。高齢化、過疎化、、、荒廃が進むこの里山の中には、これからの循環型生活を創り出すために必要な技術と知恵がつまっている。これを一人でも多くの人に知ってもらい、これからの私たちの生活にどう「活かしていくことができるか」一緒に考えたい。。。

そんな、第一歩をこの日、踏み出せたと思っています。

さて今回の里山の会。「より充実したものにしたい!」と、pacoさんにお願いし、前半・後半と2日に分けて企画。前半を「インプット(里山の概要を知る)」、後半を「見て感じて考える」、ということにフォーカスして組んでみました。

前半は、2時間半と長めにとったつもりでしたが、あっという間に予定時間が過ぎました。内容、濃かったですね。

また、渡辺pacoさんのレクチャーもさることながら、今回は森林ボランティアをしている方や、田舎に10年暮らしていた人など、参加者にも恵まれました(とかいって、毎回、恵まれている気もしますが。笑)。実体験を持つ人が多くいるので、後半でのディスカッションが今から楽しみです。

最後に、渡辺pacoさん、後半戦も宜しくお願いいたします。また、参加者の皆さん。前半ではあまりできなかったディスカッション。後半大いにしましょうね(前半のみの方、ごめんなさい!議事録期待していてください!)!

和散歩・主宰
嘉誉

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2.議事録

書記:マシュー・中島@和散歩

2.1.里山は失われつつある日本人の原風景
2.2東京に残された里山での生活の様子
2.3.土地の形状を活かした里山のサイクル
2.4.林も手が入らないと機能が失われてしまう
2.5.世界に通用する日本人の植物の知識
2.6.里山を持続させるためには、どんな方法があるだろうか
2.7.失われつつあるものをまもるためには

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2.1.里山は失われつつある日本人の原風景
まず、園芸家の柳生真吾氏が出演したNHKの番組「おしゃれ工房 里山で遊ぼう」のビデオを上映。柳生真吾氏は俳優の柳生博さんの息子さんで、pacoさんの六兼屋からも程近い八ヶ岳・大泉にある『八ヶ岳倶楽部』の代表でもある。(八ヶ岳倶楽部は裏に大きな美しい雑木林を持つギャラリーとレストラン。)

このビデオで、まず里山の概念を説明した。

里山は、人がかかわって成り立っている自然で、日本人の原風景でもある。アニメーション映画『平成狸合戦ぽんぽこ』で舞台となった高度経済成長期の多摩丘陵で失われ行く風景が、まさに里山のイメージ。今回、会の開催された三田あたりでも明治の頃までは、里山の風景が広がっていた。

里山は、水辺と田があり少し小高いところに雑木林が広がっている。そして田と雑木林の間に民家があり、これがセットで里山、もしくは里地と呼ばれる。(全体を里地と呼び、雑木林の山のみを里山と呼ぶ場合もある。)ビデオでも、田の奥に雑木林がある、段々状の風景が映し出されていた。

生物の多様性も里山の特徴のひとつである。特に番組の舞台となった田は無農薬なので、(食用になる)タニシやタイコウチなど今ではなかなか見られない様々な生物が生息していた。実際の里山の田の多くは農薬を使用しているので、もっと生物は少ないし、食用はできない。

番組中の川遊びの風景にも特徴があった。コンクリートで護岸工事をしていない川なので、川辺には草が生い茂り、川と植物が重なっている地帯がある。ここは川の流速が遅くなり、隠れる場所も多いので、小魚や昆虫がすみやすい環境になっている。コンクリートで固めてしまうと流速が速くなって、メダカなどは流されてしまい住むことができない。

川の護岸工事をするのには2つの理由がある。ひとつは、田を流失から守るためで、効率化のためや機械の導入で田が川のぎりぎりまで大型化したため、強度を得るのに必要だということ。もうひとつは、土建業者のためである。

2.2東京に残された里山での生活の様子
続いて2本目のビデオは同じくNHKの番組で、東京・日野市に残る農家の様子が紹介されている「東京の里山〜石坂家が残したいもの」 。この農家では、主に自分の家で食べるものを作っている。作物の種類は約100種類だという。この里山の広さは約3ヘクタールで、20人くらいが生活できる食べ物を生産することが可能である。また、この農家のある日野市の倉沢は、川が流れていて田があるという里山を意味する地名であり、谷津や長津田などよく耳にする地名も同様に里山を意味している。

ビデオでは石坂家の3月のある1日が映し出された。朝9時頃に起床、体操をした後、裏の竹林に入り竹の子を取って朝食のおかずに。調味料の山椒も生えているものを使う。新鮮な食材の朝食は実においしそう。

食事後は、田を見回り田起こしの時期を計る豊富な経験で気候と農作業のタイミングを決める。その後、雑木林に入って落葉をかく作業。番組に登場した、木の密集度が低くまばらに感じられる林には、太陽の光が差し込んで明るい。これは、よく手入れがされている証拠でもある。ここで落葉を拾い、家の近くまで運んで「落葉むく?」(四角い大きな船状のもの)に入れて、腐らせて肥料としている。ちなみに、昔はどこの雑木林で落葉を拾ってよいかの権利が決まっていて、山の中にも集落ごとの境界があったそうである。

この作業の合間合間には必ず一休みして、一見のんびりとした様子である。しかし、里山には実にやることが多く、一つ一つの作業が大変なので、休み休みやらないと身体が持たないのである。

2.3.土地の形状を活かした里山のサイクル
里山は地形とも密接な関係がある。扇状地の傾斜を生かしたまま、水平な田を階段状の棚田として作り、水路を引いている。等高線にあわせた曲線の田の写真などからも、土木国家日本の原型がうかがい知ることができる。このように、江戸時代に推奨された新田開発によって、狭い土地を開墾して人口を増やしていったのである。この時期から約400年、日本人は里山と共に生活してきた。

田畑に加えて、雑木林も里山のサイクルには欠かせない。雑木林は人の手が入った人工林であり、主にクヌギ、ブナ、コナラなどの落葉広葉樹が植えられている。これらの木は育成が早く、薪や炭などの燃料としての利用価値が高い。木を切るときも根を残し、またそこから成長させるため、成長も早い。落葉は堆肥として利用し、落とした枝などはキノコの苗床として使われる。このような雑木林は生物の種類も豊富であり、見通しの良いすっきりとした雑木林は、いわば効率の良い最新のオフィスのようなものなのだ。

しかし、薪を燃料として使用しなくなったり、化学肥料が普及すると雑木林に手が入らなくなり、荒廃したり売られたりして、サイクルが断ち切られてしまう。使われなくなった竹林も大きな問題となっている。以前は、道具を作る材料として、また竹の子を食用にしていたので竹林が大きくなることはなかったが、現在、切られなくなった竹林が広がって、建物を壊す被害が出ているという。里山は、どれかひとつが止まるとサイクルが回らなくなってしまうのだ。

江戸という都市もエコロジーのサイクルの中にあった。下水処理が発達していない時代、ロンドンやパリといった都市は糞尿の処理が上手くいかず、時にペストなどの疫病を発生させる不衛生な場所でもあった。しかし、江戸は江戸近郊の農村で使われる肥料として、積極的に回収されていた。長屋の大家は住民の糞尿を売る権利があり、時に金肥とも呼ばれ重要な収入でもあった。

2.4.林も手が入らないと機能が失われてしまう
薪も炭も同じ燃料であるが、その違いはそれぞれの重さ(運搬のしやすさ)にある。家の近くでは、切った木を乾かして薪として使うが、遠いところや高いところにある薪は、乾かしても含まれている水分のために重くて運ぶのが容易ではない。そのため、山の中などに炭焼き小屋を作り、薪を炭にして水分を抜き軽くしてから、運搬していた。炭は町でも使いやすいため、売って現金収入とすることもできた。山が荒廃した原因のひとつには炭を焼かなくなった(木を切らなくなった)こともあげられる。常に、動かしておかないと失われてしまうものがあるのだ。

日本の林は放置しておくと照葉樹(冬でも葉を落とさないで、一年中緑色をしている常緑広葉樹で、葉に厚みがありつやつやとしている)の林になると言われている。しかし照葉樹は人間にとって使いにくい木なのだ。

2.5.世界に通用する日本人の植物の知識
日本の植物に関する知識は深く、日野の農家でも100種類という多くのの作物が育てられている。雑木林を含めて様々な植物を組み合わせて、豊かな生産性をあげる里山の技術は、遺伝子操作などとは対照的なバイオ戦略と言えるだろう。日本ほど、植物に対する知識が豊富な国は世界にも例が少ない貴重なスキルだといえる。

アマゾンなどで単一の作物を育てるため、数年で土地がやせてしまう問題が起きている。単に作物が取れなくなるという問題だけではない。農場で働くようになった現地の人は、作物の収穫力が低下して農場がだめになっても、そこで身についた金銭感覚から、以前の生活に戻れず都市部のスラムに行ってしまうケースも少なくない。これを解決するために、『アグロフォレストリー』という方法が始められている。アグロフォレストリーとは、単一の作物だけではなく、樹木を含めた様々な植物を組み合わせて植えることによって、継続的に土地の生産性を落とさないようにしようというもである。これは、まさに里山の発想であり、日本人が持っている植物に対する高い能力は世界でも十分活かせるはずなのだ。

2.6.里山を持続させるためには、どんな方法があるだろうか
今、里山の主はどうしたいと思っているのだろうか?普通の人は、特に何も考えていないのが現状のようだ。高齢化も進んでいるが、それでも米は作れる(実際、楽にやろうとすれば年に10日ほどしか働かなくても米はできるらしい)ので、労働力の多い里山のシステムは崩壊しつつある。

このまま失うには惜しい里山の魅力を高める方法はないのだろうか?

エンターテイメント化して付加価値を高めるという方法もありそうだ。

他にも、体験農業の教育的効果も大きそうである。植物を育てるとき、手をかけるとそれに植物は応えてくれる。それが嬉しくて、いろいろ工夫をするのにはクリエイティブな力が鍛えられるし、学校では教えられない教育的な側面も大きい。植物を育てることは、人を育てることにつながっていく。

また、都会のスポーツ・ジムに行ってダイエットに励むよりも、山仕事などで汗を流すほうがいいのではないだろうか。ジムでいくら汗を流しても生産性は0だが、山仕事なら、運動にもなって、生産性もあるし、自然の中で五感も気持ちよい。週に1度くらいだったら行けそうでは。

2.7.失われつつあるものをまもるためには
最後に、NHKにんげんドキュメント「ムツばあさんの花物語 〜秩父山中段々畑の日々〜」のビデオを上映。 埼玉県の秩父山中で暮らすムツさん老夫婦は、急な斜面に作った段々畑で野菜やクワ(養蚕業)を育ててきたが、養蚕業は廃れてしまった。ムツさんたちは、桑畑を荒らしておくのはしのびないという気持ちから、四季を折々を彩る花を植えて、今まで使ってきた畑を自分達が死ぬ前に美しくして山(森)にかえそうとしている。ここには、自分たちが死んでしまってからも伝わる、花に託したメッセージという大きな時間の感覚がある。今すぐ、というスピードと効率を追求している今の日本人には失われた能力かもしれない。

そう簡単に失ってはいけないものを守るためにはどうすればよいのだろうか?

米国の企業が巨額の寄付金を出したりするのは、税金対策という側面が大きい。日本では、まだそういった優遇はない。やれることに対して、仕組みができていないことが多く、人がそれを妨げていることも少なくない。いいものがあっても上手く流れないこともある。

しかし、知恵はまだまだあるはずで、そのためにも優れた循環システムである里山を多くの人に知ってもらいたい。

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3.参加者の感想
具体的に循環の意味が分かり、今後の農業家へのとらばーゆにとても役立ちました(特に、落ち葉の意味。雑木林もしらなんだ。あと止めると終わること)。実際、月に何回か行くというのは難しそうなのでスッパリ衣更えのほうがいいような気がするなぁ。今のままだとこれから日本は食糧難になると思う。そのためにも、畑はもったいないよね(不動産会社勤務・男性)

里山システムの維持は、日本文化そのものであり、その伝承は、ナレッジマネージメントだと思った。萌芽更新、竹の活用等、寿命より長いスパンで見ないと判らないことがが、伝わっているところがすごい(通信会社マーケティング・男性)

何気ない日本の原風景が、実は素晴らしいリサイクルシステム、再生産のシステムであることを改めて認識した。日本人が持っている、素晴らしいノウハウを次世代に伝える方法を考えてみたい(コンピューターメーカー・人材開発担当・男性)

水路を引いたり、農作業をしたり、、、このような生活では自然に地域社会のつながりが強くなったり、家族の絆が深まったり、年上の人の経験や知識、力に対しての尊敬が生まれると感じました(税理士事務所勤務・ティーコーディネーター・女性)

里山について、おもむろに聞き知っていたことが具体的な話を聞くことができて、すっきりした気分です。あらためて、自給自足に興味を持ちました(製作会社勤務・女性)

全体として、とてもわかりやすく楽しい会だった。Pacoさんkayoさん、皆さんありがとう。昨年の2月まで約10年間田舎(里山に近いと思います)で暮らしていたが、それがこんなシステマティックな生活だったとは考えてもみなかった。ある意味、とてもカルチャーショックでした。い(里山とは違うかもしれませんが)田舎の生活は、確かに物質的には豊かではあるが、やはり現在(特に若い人)は現金収入が必要で(例えば、今どきパソコンやオーディオ機器・携帯ぐらいは持っていないと。。。)、ほとんどの人は平日は工場などに働きに出ている。なかなか、きれいごとではすまない状況だと思う(いなかでお世話になった家に、手紙を書きたくなった)(メーカー・商品開発担当・女性)

システムとしてぐるぐる回っていると、一ヶ所壊れたor Replaceされただけで、連鎖的に弱ってしまうのですよねぇ。スピード化された社会にいる人が、自然の時間の進み方を理解することから始めないといけないのですね(女性)

里山について、様々な角度からの情報や考え方を得ることができた(会社員・男性)

里山…自然のリサイクルのノウハウをどう伝えていくかを考えるきっかけになりました(自営業・男性)

まずは、子供に話したくなった。そしてできたら、近いうちに連れて行ってみたくなった。小学校のころ、校庭で田んぼを作ったが、今思うとシステムとしてではなく「単体」としてしか理解していなかったし、今はどんな風に習っているのだろうと興味がある。是非、帰ってから息子にも語ってみたい。もう一つ興味を持ったのは、「里山の時間感覚」・・・うまく語れないが、大事な感覚を思い起こせたような気がする(航空会社勤務・男性)

本当にうまく循環しているなぁと感心しました。やはり、この知恵は伝えていくべきだと思います。ただ、残念なのはその知恵を持つお年よりたちに伝えていく気力が少ないことだと思います。例えば、昔、草むしりがきらいだったけど、そこにちゃんとした理由があり、やったあとの成果も教えてもらえれば、(楽しくはないかもしれないけれど)前向きにやることになると思う。子供時代にそういう命の循環を感じて育つのは人間にとっても、とても大切なことだと思います(投資信託・ファンド計理・女性)

前のワークショップと比べて、いろいろ変わってきていて面白かったです。里山には単純に食べ物を作る以外にも色々使えそうという話は面白かったです。里山は単純に食糧生産のことを考えてもなくなってしまうのは危険だと思っていて400年以上溜めてきたノウハウを一度失うと元通りにするのは難しいだろうし、食料を海外から買えなくなった時、困るだろうなと思っています。最近は、嘉以外の情報を仕入れるだけではなく、日本の持っているものを外に出したいなと思っています(3DCADエンジニア・男性)

里山の全体像とサイクルを学びました。人間が生きていくために必要な自然とは何か?今の時代に、その自然を何のために維持するのか?すぐに答えはでなそうですが、実際に経験することで少しずつ分かりそうです(コールセンター・トレーナー・男性)

遅れて参加してしまったので、始めのほうが聞けなかったのですが、人間と自然の共存を実践してみたいです。何か行動を起こしたいと思いました(会社員・男性)

お話を聞いて、なぜだかわくわくしたりしました。考えることは、たくさんあると、思いますが…。日本には、こういうことがあるんだ・・・と、知れたことに大変価値のある時間だったと思います(菓子製造販売・女性)

炭と薪とか、雑木林とか、知っているけど知らなかったことの発見がいろいろあって、嬉しかった。都会暮らしが長くなり、人の世界とかお金の世界とかにひたっていることで、子供の頃持っていた自然とか、宇宙とか、そういうものへの感覚や思いを忘れ喪っていることに気付きそういうのが大事…(米菓・和菓子会社勤務・男性)

自然から気がつくことは多いです。いろいろと考えるヒントをもらいました。里山に対して自分が何をできるかは、大きなテーマですね。考えてみたいと思います(会社員・男性)

里山の計算された循環システムに心底驚きました。これも、「日本の力」なんですね。子供の情操教育への利用など、今後の展開への工夫に頭をしぼってみたい(まずは、植物の名前をたくさん覚えなくちゃ!)pacoさんのわかりやすい説明に感謝です。ありがとうございました(書籍編集・男性)



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