第15回 「自然を感じる、現在(いま)を感じる和菓子職人の極意里山」
1.はじめに
2.議事録
3.参加者の感想
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1.はじめに
2003年10月5日、東京・三田で、和散歩・趣き深き会 第15回「自然を感じる、現在(いま)を感じる和菓子職人の極意」を開催しました(参加者13名)。これは、その議事録と参加者の感想です。
秋晴れの、気持ちいい日曜日。簡単な和菓子の歴史を、池袋・梅花亭4代目若旦那、井上豪さんにご説明いただいた後、皆で近所を散歩しに出かけました。これから作る、和菓子の題材を求めて!
実は、この2週間前、和菓子の題材をスケッチするであろう場所の下見にと、散歩に出かけたのですが、公園そしてその周辺は緑一色。。。「あー、秋の和菓子の題材になるものが少ないなぁ。。。」と思っていたのでした。
しかし、当日。金木犀、山茶花、むくげ等々、秋の花々がそこかしこに。。。同じ場所なのに、たった2週間で風景は変化するものですね。
また、コンクリートに囲まれた都会の道も、よく見ると多くの草花が凛と上を向いて生きているのが分かります。普段は見過ごしている身のまわりの自然を感じた一時でした。
そして、その題材を元に、皆で和菓子づくりに挑戦(詳しくは、議事録を)。
会終了後は、「日本と自然」をテーマにディスカッション。日本人が日本のことを考えるって、あまりないですよね(慣れない人は、戸惑いもあったかもしれません。いかがでしたか?)。
和散歩・趣き深き会は日本を「知る」だけでなく、「考える」場にしたいなと思っています。知るということは「それぞれのドアを開くこと」。そして、考えることは「各々、自分の中に取り入れること」。そんな風になればな、と。そうなるには、もっと、いろいろ改良しなければ。。。皆様、是非、ご協力を。
さて、この議事録、及び、感想は参加者の主観です。したがって、事実に即していないもの、また、皆様とのご意見が違うことがあるかもしれません。何分、一意見として、ご覧いただけますよう、お願い申し上げます。
最後に、炉開きと重なり、お忙しいにもかかわらず、時間を調整いただいた井上さん。ありがとうございました。普段は出来ないスケッチなども取り入れることが出来、楽しい会となりました。すべて、井上さんのお蔭です。また、和気藹々とした場を作ってくれた参加者の皆さんにも感謝したいと思います(写真をとってくれた、日野さん、ちあきちゃん、ikkoさんにも感謝)。
和散歩・主宰
嘉誉
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2.議事録
書記:クヌギヒサコ@和散歩
2.1.和菓子の歴史
2.2.和菓子を作る
2.2.1取材
2.2.2.菓子化
2.2.3.材料の話
2.2.4.作ってみましょう!
2.2.5.成型のポイント
2.3.井上さんへのQ&A
2.4.ディスカッション
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2.1.和菓子の歴史
まず、井上さんから和菓子の歴史についてお話がありました。
「菓子」はもともと「果子」と書き、それは、干し果物などのちょっとつまんで食べるものを指しました。
その後、僧侶たちが仏教とともに中国から菓子作りの技術を持ち込みました。しかし、それらは神仏への「お供え」の性質が強く、人が食べて楽しむものではありませんでした。また、砂糖は高級品で、今のように使われるのはだいぶ先のことになります。
現在の和菓子のはじまりは、千利休の茶道において、お茶をより引き立てるための食べ物としての菓子でした。この当時も砂糖はまだ使われず、たとえばゆで栗のような、味付けのない果実などのそのものの甘さだけの食べ物でした。
その後、江戸時代になって海外から長崎・出島を通じて菓子の造形・細工技術が伝わったことと砂糖が使用されるようになったことにより、現在の和菓子の原型になりました。
2.2.和菓子を作る
歴史のお話の後は、いよいよ和菓子作り体験です。
2.2.1取材
最初に、和菓子の題材を探しに出かけます。今回は会場近くの公園です。
いつもは足早に通り過ぎる道にもきんもくせいは香り、街路樹の葉はたしかに色が変わりつつあります。公園は、日なたはあたたかく、木陰はひんやりとしています。
そして、小一時間ほど参加者それぞれが、空を見上げたり、木を眺めたり、葉や花のひとつひとつに顔を近づけては、デジカメに収めたり、持参の色鉛筆で絵を描いて過ごしました。その様は、公園に来ていた親子連れにはちょっと不思議な光景のようでしたが、久しぶりに絵を描いたり、公園でのんびり過ごすことは、それだけで楽しいひとときでした。
少しゆっくり歩いて、よく見てみると、そこここに秋の兆しを見つけることができる。その心構えを持つだけで、毎日の生活に季節の要素を加えることができるのではないかと思いました。
2.2.2.菓子化
次は、取材したものから菓子のデザインを考えます。
基本的にはスケッチ(写真)からズームアップして、特徴的な部分を引き出すようにして菓子の形に変えていきます。
菓子の形と同時に、成型方法(土台)と材料の割合も考えます。今回は「山茶花のつぼみ」を例にして考えていただきました。
成型方法(土台):茶巾型
材料の割合:白あん21g(赤に着色16g、緑に着色5g)、小豆あん14g
注)一般的に、ひとつの菓子は35gにします。また、白あん(外側のあん)と小豆あん(中のあん)の割合は6:4です。
井上さんは、実際に梅花亭で売られている菓子の図案を持ってきて見せてくださいました。季節ごと、いろいろな菓子があることに一同、たいへん驚きました。たとえば、柿ひとつにしても、時期によって色が異なり、季節の移ろいを感じられるようにデザインされていました。
2.2.3.材料の話
あん:
和菓子は、言わば「あんの塊」。あんを作るところに、和菓子作りで最も時間と手間がかかっています。今回使うあんには白あんと小豆あんがあります。
白あん=お菓子の周りを包む。求肥が6%入っているため、やわらかく伸びる。また、着色料で着色することができる。
小豆あん=お菓子の中に入れる。ほろほろとしていて、やや崩れやすい。
砂糖:
あんに使う砂糖は、季節やそのあんの使途によって選んでいるそうです。ちなみに、今現在、普段私たちが使っている上白糖のほとんどは輸入に頼っており、国産の砂糖は黒砂糖と和三盆糖だけとのこと。
着色料:
梅花亭では天然の材料から抽出した色素を用いた着色料を使用しています。
和菓子の業界ではまだ食品としての安全性についてこだわることが少なく、その点では他の食品に比べ遅れているそうです。その中で天然色素を使うことは価格の上でも難しいことなので、梅花亭の努力の現われといってよいと思います。
2.2.4.作ってみましょう!
今回、私たちは2グループに分かれて、それぞれ「秋の木の葉」と「山茶花」を作りました。
「秋の木の葉」は折曲げ型で、緑と橙を混ぜた木の葉型の白あんで小豆あんをくるんで作ります。一方、「山茶花」はもみ上げ型で、濃い目の桃色と白を重ねた白あんの中に小豆あんを包み込むように作ります。
どちらも、あんをいじりすぎると乾燥し、味も落ち、痛みやすくなるので、手早く作ります。
2.2.5.成型のポイント
秋の木の葉:徐々に色づいていく様を表すように緑と橙を混ぜる。少し枯れた感じを出すには、葉の先を反らせるとよい。
山茶花:桃色と白を丁寧に重ねて、ぼかしを作る。おしべには裏ごしした黄色のあんとしんきび粉をつかう。
出来上がった菓子は、自分の手のひらの上ではなんとも心もとないのですが、ケースに入れると、いかにもそれらしく見えました(笑)。
2.3.井上さんへのQ&A
和菓子作り体験の後、井上さんにお話を伺いました(質疑応答)。
−いつもネクタイをしているのですか?
「いいえ、今日はおめかしです(笑)」
−和菓子は、季節ごとのデザインがあっても結局味は一緒で、それが寂しい気もするのですが?
「もともと茶道のために作られているので、お茶の味を邪魔しないことも、菓子の大事な要素です。」
−どのくらいの周期でデザインを変えるのですか?
「15日ごとに(月2回)変えています。基本的には10種類、色や形が重ならないよう、色々に作ることを心がけています。題材は季節を少し先取りするようにしていますが、このところの温暖化で、題材選びに苦労することがあります。」
−デザインはまだまだ増えますか?
「はい。今はまだ多様性の時期なので。」
−普段、菓子を作っているときは、何を考えていますか?
「何も考えず、無心で作っています。集中していないと、形が決まらなくなってしまいます。」
−池袋と有楽町(注:梅花亭は2店舗あり、有楽町店のほうが新しい。)、マーケティングの面で違いはありますか?
「池袋は固定客がほとんどで、決まったものしか買われない人が多いです。そのため、新作を出しても、反応が少ないことがあります。一方、有楽町は通りすがりの人をつかまえないといけませんから、マーケティングの必要性を感じました。今は売り子さんの意見を重視して新作を多く出すようにしています。」
2.4.ディスカッション
今回は初の試みとして、ディスカッションの時間を設けました。テーマは「日本と自然」。
以下は、ディスカッション後、考えてみたことも含めての議論のまとめです。
ディスカッションで多く出た意見に、「子どもの頃は身近にあって当たり前だった自然が、いまや、身近にない、どこか遠くへ行かないと接することができないものになってしまっている」というものがありました。
また、「少し前(若い頃)は特に自然に触れたいと思うこともなかったが、最近は、旅行にしても、自然に触れることを目的にすることが多くなってきた」という人も多かったです。星で埋め尽くされた夜空、人間の存在のちっぽけさを思い知らせる山々、そういう場所へ出かけて圧倒的な自然を感じる旅行もたしかに魅力的です。
しかし今回、題材探しのために公園まで散歩をしたとき、参加者の多くが「意外と」身近に自然(緑)はある、ということがわかったのではないでしょうか。今まで、日々の生活にかけていたのは、自然そのものではなくて、自然を見つけ、感じ取る感覚だったのかもしれません。
自然に触れたいとき、どこかでどっしり構えて待っているものではなく、私たちのすぐ横で飄々としているような自然に目を向けてみる、そうして、自然に対する感覚を研ぎ澄ましていけば、圧倒的な大自然に触れるとき、また違った発見があるかもしれません。
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3.参加者の感想
今日、スケッチに出かけて、花ミズキに赤い実がなることを知りました。ちょっと、感動、、、。見逃しているものが、沢山ありそうです。時には、一つのものをじっーっと観察するのはいいことです(菓子製作・料理研究・女性)
和菓子づくりの技術の高度さが、本当にすごいことなのだと思った。やってみてはじめてわかった(建設会社勤務・女性)
「四季を探す」ことがとても新鮮でした。普段何気なく通っている道でも「発見!!」がある予感。先生のマジックハンドにびっくり。細部まで、きちんと観察したデッサンを和菓子に組み立てなおしてデザイン。そして、形にする!この一連の流れにプロを感じました。色の配合が、マニュアル通りでなくても、勘ということにもうーん納得(ティーコーディネーター・女性)
講師の井上さんが、スーツにネクタイという服で一般の方と同じだったのは意外だった(和菓子を作る方なので、和服で特別な方という先入観を持っていたので)。東京にもよく探せば、季節を感じられるものがあるというのが実感できた。和菓子を作るのは、見ていると簡単だけどやってみたら難しかった。でもやってみて面白かった(通信会社SE・男性)
実物を描写にしていたところが面白い。そもそも、形で季節を感じるというところが面白い(教育関係・男性)
シンプルな技法なのに、技量の差がはっきり作品(製品)に現れる和菓子の世界。奥深いとしみじみ感じました。楽しいですねぇ(会社員兼経営者・男性)
季節を取り入れる自然を観察するという気持ちは、普段はつい忘れがちになりますが、身近なところでもその気になれば沢山見つけられるんですね。和菓子に関しては、限られた材料であそこまで色々なものを表現できるってすごいなぁと改めて感心しました(女性)
和菓子の会は、足を使って題材を集め、手を使って和菓子を作ったのが体験として楽しかったです。手の感触から学ぶことは大きいことを実感しました(コールセンタートレーナー・男性)
和菓子というものが、これだけ四季と密接にかかわっているということを再認識しました。これからは、四季を感じるために野山に行くというだけではなく、和菓子屋さんに行くのもよいかなと実感しました(電機メーカー営業・男性)
和菓子の作り方には、以前から興味があったので実際に自分で作る機会を持ててよかった(コンピューター会社・企画部門・女性)
和菓子についてだけでなく、自分で作ることが出来とても楽しい一時でした(化学品メーカー勤務・女性)
シンプルな道具しか使わないのに、これだけ美しいものを作り上げる技に感動しました(特許事務所勤務・女性)