その1(着物):人形町・綿やで心を着る
7月から9月までの和三昧月間に備え、「普段着れる着物がほしいなぁー」と思案中の私。でも、どこで、何を、どーすりゃいんだろう。取り合えず、Webで着物と引いて見る。んー、いっぱいある。値段も、十万前後から百万近くまで。タイプも小紋、振袖、訪問着、、、、正直よーわかりません。ならばやっぱり、生の着物を見ながらお店の人に教えてもらうのが一番さっ!と人形町へ向かうことにした。
豆腐屋、煎餅屋、三味線屋、、、昔ながらの専門店が連なる甘酒横丁。そこに、綿やという和装店があった。木造二階建ての門構え。古い木の柱や階段は丁寧に磨かれており、店の歩んだ年月が木の鈍い光沢に感じられる。入り口の両脇には反物がずらり。1つ1つ丁寧に巻かれ、整然と並べられた反物というのは実に美しい。反物は、中を見なければ柄もなにもわからないのだけれど、この店ではそれがあるだけで絵になる。
おっと。うっとりしている場合ではない。私は、着物が見たいのだ。でも、何をどう見たらいいのだろう。着物自体はよく着た事があるのだが、実は反物を触ったことがない。反物をおそるおそる開いてみる。スカート捲りでもするように、ぺらっと。でも、これじゃなんだかよくわからない。えーい、恥は掻き捨て!と思い、お店の人に聞くことにする。
「あのー。反物はここにあるのがすべてですか?」
「ええ。あっ、どうぞ開けて見てください。なんなら、いくつかこちらで開けてみましょうか?」
「お願いします」
「どういうのをお探しですか?」
「それが。。。よくわからないんです。お茶とか、そういったお稽古事のときにさらっと着ていける着物があればなと思って。」
「お客様の感じでお稽古などですと、小紋がいいかもしれませんね。訪問着だとあらたまりすぎているし、気軽って感じではないと思いますから。あと、総柄の御着物よりも、無地やシンプルなもののほうがお稽古の邪魔にならなくていいと思います。色も、明るい色のほうが場が華やいでよろしいですね。」
私の年齢をさっと察しながら手際よく選ばれた反物が、テーブルの上に次々広げられていく。水色、黄色、グリーン、、、私が選んだのは水色地に花柄が全面に入ったものと桃色地に所々お花が入っているものの2点。
「どちらかというと、総柄の御着物でないほうが長く着られるかと思います。京都でお母様が買われていたというなら、それも結婚式やお正月などでしか着た事がないというのであれば、たぶん総柄のものが多いかと思いますし。」
ということで、水色は却下され、桃色を選んだ。
さて、次は帯。
「普段使いですと、名古屋帯ですね。」
「名古屋帯ってなんですか?」
「名古屋帯というのは、こういった帯ですね。」
「あっ、やわらかい!じゃぁ、いつも私が振袖などに合わせていたがっちりした帯は。。。」
「こういうのですか?これは袋帯ですね」
あー、やっとわかった。百聞は一見にしかずね。
「初めての方ですと、帯は白、黒、朱の3色から揃えられることをお薦めします。この3つさえあれば、どんな御着物にも合わせられるので便利です」
「こんな、桃色に黒を合わせても平気なんですか?」
「ぜんぜん、問題ありません。かえって締まって見えていいんですよ。」
結局、私は白っぽいちりめんの名古屋帯を選ぶ。
「今日、初めて着物を見るので、すぐには買わないのですが、これでおいくらでしょう」
「じゃぁ、お見積もり出しますね」
こんなに時間をかけても買わないというのに、快く対応してくださる。着物と帯、仕立てていただいたとしてのお見積もりは428,400円也。果たしてこれは高いのか。他のお店では、どれぐらいするのだろう。近くに、着物のリサイクルショップがあった(そう、着物のリサイクルショップは意外とたくさんあるらしい)。数万円から小紋が買える。でも、これって比較になるのだろうか。今回店にいって思ったのは、綿やのような老舗の専門店で着物を買うというのは着物だけを買うのではないのだということ。綿やで買う着物を身に纏うことは、単に物質を纏うというよりも、着物にまつわる文化そしてそれに携わる人の気持ちをも一緒に身に纏うことなのではないかと。なんとなく、モエを飲むときの感覚に似ているような気がした。