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その4(落語):落語を肴に、ちょいと一杯(後編)

新橋の「炉ばた寄席」。今日の演目はこれにて終了!ということになり、本日の舞台を務められた三遊亭らん丈さん(三遊亭らん丈さんのHPはここ!http://ranjo.jp。炉ばたには8月3日(土)、13日(火)出演予定)と話をさせていただけることになった。

「ちょっと、待ってて下さいね。今、着替えますから」
中に引っ込むこと約10分。今度は、Tシャツ&短パンという軽装で出てこられた。服装は人を創るというが、らん丈さんも着物を脱ぐと、となりのお兄ちゃんという感じ。

「こーゆーのを、根多帳って言うんです」
といって、25cmX60cmぐらいの太長い紙を綴じた台帳を見せてくれる。高座に上がった落語家は、そこに筆で日付と何の落語をやったかを書いていく。後から出る落語家は根多帳を見て、同じ噺はもちろんのこと、同類のものも避けて自分の演じる噺を決めていくそうだ。

「第1回目のから全部、あそこにかかっていますよ」
と、高座の横にぶら下げられた、数冊の分厚い根多帳を指差す。すこし黄ばんだその台帳には3631回分の炉ばた寄席の歴史が詰まっているのだろう。

賄いのカレーとビールがらん丈さんのところに運ばれてくる。ますます、となりのお兄ちゃん色が強くなってきた。。。

「落語って、本題に入る前、前段(話しのまくらと言うそうです)がありますよね。今日だったら、野球ネタとか。あれって、どうやってネタ集めするんですか?」
「別にたいした事はしていません。自分が普段関心のあることを話すだけです。だって、そうでしょ。突然、何かを勉強して話しても、とってつけたようなことしか言えませんから」
「でも、毎回、考えるのって大変ですよね」
「演芸場での寄席の場合だと、まぁ、毎日いらっしゃる方はいないので、同じネタを話すことも多いですよ」

カレーをスプーンですくいながら、そっけなく話す。

「お稽古って、どんなことするんですか?」
「師匠の円丈について、普通に稽古するんですよ。。。でも、他の師匠の落語を聴いていて、この落語が面白い!と思えば、その師匠に、お稽古をお願いします」
「同じ三遊亭でなければいけないんですか」
「別に。誰だって、いいんです」

相変わらず、そっけない。。。えーい、直球だ。

「どうして、落語やろうと思ったんですか?」
「そんなの、好きだからですよ。」
「どーゆーとこが、好きなんですか?」
「どこってねぇ、好きに理由なんてないですよ。ただ、好き。だって、そうでしょ?好きになる前は、顔とかプロポーションとかいろいろ言うけど、好きになったらそんなの関係なく、好きになっちゃう。落語家やっているやつは皆、そう。ただただ、落語が好きなんです。しかし、貴女、初対面なのによく次から次へと質問が出てきますねぇ。」

あはは。。。

「ところで、貴女は何やっているんです?」
あっ。。。確かにそうだよなぁ。たまたま声をかけたにしては、質問がありすぎるように見えるよなぁ。そこで、ちょっと自己紹介。

「ほぉ。。。文章を書いているんですか。私も、文章書くの好きですよ。。。日本人がもっと日本のことを知らなければというのも同感ですね。実は今回の自分の会報に、丁度似たようなことを書いたんです。日本語について。この国際社会の中で、日本人にとってまず大切なのは、英語が使えるということではなく、日本のことをきちんとした日本語で話せることだと。私は噺家だから、特に言葉へのこだわりがあるんです」

よくよく聞くと、このらん丈さん、現代社会の諸問題に大変関心が高い。そして、その問題を自分なりに解決するべく、アクションをとっている。町田市議戦に出馬したり、興味のある社会科学について勉強したいと大学に行きなおしたり。。。
「大抵の落語家は酒やギャンブルにお金を注ぎこんでますが、私は自分に投資しています。落語家としては、ちょっと、変わってますね」

カレーも食べ終わったようだ。長く、お引止めしても申し訳ないので最後の質問。

「どういうとき、やっててよかったなぁーって思います?」
「そりゃーもう、お客さんが笑ってくれることです。高座に上がっていると、お客さんの反応ってよーくわかります。自分の思ったところで、わっと笑ってくれる。そりゃ、嬉しいですよ」
と、硬かったらん丈さんの表情がふっと緩む。

スポーツ紙を愛読する落語家も、日経・朝日を愛読する落語家も、一番の関心事は客が笑ってくれること。大好きな落語家の噺を聴いて、かつての自分が笑ったように。。。

敬服す
師匠の紋を
身に纏い
客の笑いに
あの日を思ふ

おあとがよろしいようで。

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