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その8(落語):落語家の晴れ舞台、真打昇進披露公演でい!

ある朝、用事があって銀行にいった。大抵の店は、平日の午前なんて空き空きなのに、銀行ってなんで、いつも、こんなに混んでいるのだろう。。。ぶつぶつ。。。と、口を出して文句をいう勇気はないので、頭に“ぶつぶつ”の吹き出しを浮かべながら、番号札を取って席で待つ。暇だなぁ。。。仕方がないから、横にあった雑誌をぱらぱらめくる。すると、春風亭小朝さんと林家いっ平ちゃんの対談記事が載っていた。
「へー、いっ平ちゃんって、三平さんの次男なのね。。。で、小朝さんって義理の兄なのねぇ。。。」

芸能ネタにはあまり強くないけど、三平さんと小朝さんぐらいは知っている私。こんなことで、妙に感心してしまい、続きをよく読んでみる。

「へー、いっ平ちゃんって人、真打昇進するんだ」

落語家は、前座、二ツ目という修行期間を経て、真打となり、一人前の落語家と認められる。その道のりは、遠く、厳しいものがあると聞く。だからどんな落語家にとっても、真打お披露目興行は、大事な大事な晴れの舞台。そして、その内容も普通の寄席とはちょっと違うらしい。

「そうと聞いちゃぁ、いくしかないでしょ。たまには、銀行の待ち時間も三文の得?」

なんて、わけもわからずつぶやき、早速その日のうちに見に行くことに。

新宿伊勢丹の向かいにある、セゾンプラザの裏。飲み屋の立ち並ぶ通りに、末広亭はある。それは、大都会・新宿とはあまり縁のないような、しっとりとした創りの建物。

入り口をくぐると、久々の寄席の世界。真中に少し古びた椅子席があり、両脇にはすこし高くなった桟敷席。そして、正面には落語の舞台“高座”がある。

いっ平ちゃんの真打昇進披露は夜の部。本来、夜の部は17時から始まるのだけれど、今回は昼夜入れ替えなしで行なわれているため、17時前の時点で、席がほとんど埋まっていた(ということは、昼の部の12時から夜の部が終わる21:00まで座っている人もいるということ?)。

舞台に目をやると、著名人からの花輪やら、「祝真打昇進」と入った手ぬぐいセットやら、お祝いの品々がずらり。中でも目を引くのが、高座の後ろに掛かった垂れ幕。舞台一杯に広がるその幕は、落語家さんを贔屓にしているお客様からのプレゼント。これが何枚かかるかによって、その落語家の人気度合いがわかるらしい。

「おっ、また変わった」

と、紙芝居のごとく次から次へと新しい垂れ幕が顔をだす。夜の部の間にたぶん6枚以上は変わったんじゃないかしら。

昇進披露に華を添えるのは、お祝いの品だけではない。豪華な出演者もその一つ。親族としては、兄の林家こぶ平さん、義兄の春風亭小朝さん、その他、師匠・林家こん平さん、笑点でもおなじみの林家木久蔵さん、落語協会副会長の鈴々舎馬風さんなど、豪華な顔ぶれが勢ぞろい。ベテラン人の落語はなんとも見ごたえがあり、お祝いの席にふさわしい。

しかし、なんと言っても、真打披露での目玉は、「新真打の口上」だろう。お仲入り(休憩)のあと、緞帳がさぁーっと上がる。舞台には、こん平師匠、馬風師匠、木久蔵師匠など、4人の重鎮を両脇に、いっ平ちゃんが神妙な顔で両手をつき、正面を見据えている。そして、師匠方、一人一人が、彼との思い出や激励の言葉を交えつつ、皆様へのご挨拶を述べていくのだ。

そのなかで、私の目を引いたのは、こん平師匠の表情であった。こん平師匠といえば、笑点でも飛びぬけた豪快さと笑いのある方。それが、今日はとても畏まっているのだ。ある意味、いっ平ちゃん以上に緊張しているように見える。その真剣なまなざしは、結婚式の父親の表情によく似ている。「息子を宜しくお願いします」と、客席の皆様に語っているようだ。血のつながらない間柄で、こんなにも自分の為に真剣になってくれる人がいるだろうか。

口々にお祝いの言葉を述べながら、落語で自分の花道を作ってくれる諸先輩方たち。舞台の成功を祈る気持ちを垂れ幕にたくし、遠くで見守るご贔屓の方たち。こんななか、取りを務めるのはさぞかしプレッシャーがかかることだろう。なんだか、自分が舞台に上がるかのように緊張してきた。周りを見ると、平日にもかかわらず満員御礼。その全員がいっ平ちゃんを拍手で迎える。

「よっ、待ってました!」

さっきの口上の場で見せた、緊張した面持ちとはうって変わり、真打の落語家・林家いっ平の顔がそこにあった。「いっ平ちゃん」ではない、「いっ平師匠」の挑戦がこれから始まる(頑張れぇ、いっ平ちゃん!?)。



*林家いっ平 真打昇進披露興行*
10月のスケジュールは下記の通り。落語がはじめての人でも、きっと楽しめます。是非、この機会に足を運んでみては?

10月上席(1日〜10日)新宿末広亭(03-3351-2974)・夜の部
10月中席(11日〜20日)浅草演芸ホール(03-3841-6545)・昼の部
10月下席(21日〜30日)池袋演芸場(03-3971-4545)・昼の部

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