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その10(能):いざ、能楽堂へ!
「わかりにくい」「ねむい」「初めて観た能のほろ苦い思い出(和散歩その9参照)」。3拍子揃った、能のヘレンケラー症候群から抜け出すべく(!?)、能の基本的な習い事「謡曲・仕舞」を始めて4ヶ月。その症状に変化はあるのか試してみようと、「期待半分」「怖さ半分」、能を観に出かけた。
JR千駄ヶ谷駅から、東京体育館のある線路沿いの道を、代々木方面にてくてく歩いて5・6分ぐらいのところに国立能楽堂はある。歌舞伎座などの存在感ある建物から比べると、かなり、控えめに見える。 入り口を通り、会場の扉を開く。。。Welcome to 能’s world!! まず、目に飛び込んでくるのは、室内なのに屋根のある舞台。そして、正面奥にどーんと描かれた松と、左に伸びた橋掛かりと呼ばれる渡り廊下。作品によって、家のセットを作ったりする芝居はあるが、固定でこういうスタイルを採るのは能独特。もともとは、外でやっていたことの名残なのだそうだけど、さながら、NHK大河ドラマのセットをここに持ってきたような感じだ。 本日、11:00から16:40までのプログラムは、能が3つ、狂言が1つ、仕舞(能の舞の部分だけ切り取ったようなもの)が2つという構成。そして、見所は、なんといっても、取りの道成寺。道成寺は「かつて一人の山伏を恋した娘が蛇体となって、鐘に隠れた山伏を焼き殺してしまう。その釣鐘が再興される時、白拍子に身を変えた娘が現れ。。。」という、恋慕嫉妬の話。道成寺は「能のいろは」が凝縮された作品でもあるので、これを中心に能舞台の面白さを見ていこう。 はじめに、オープニング。能は、ここからして普通の舞台とは違っている。よくある舞台というのは、緞帳が上がるか、暗転からライトが明るくなって始まるかのどちらか。しかし、能は、幕もなければ、ライトの変化もない。だから、準備の過程がすべて見える。 まず、地謡方(登場人物の心情や場面の情景を語ってくれる人)など、役者をサポートする人たちが、舞台の右手にある切り戸口から入ってくる。この切り戸口は、高さ1mぐらいの低い引き戸。大の大人が身をかがめてぞろぞろと入ってくる様はなんとも不思議。 通常の能であると、セットはないので、これで役者が入ってくることになる。しかし、道成寺では、このお話しで重要な役割を果す実物大の釣鐘が、4人の狂言師によってえっちらおっちら運ばれ、舞台の天井に吊り下げられる。現代の歌舞伎や多くの芝居では、舞台転換などに機械が使われる。しかし、能はすべて人力だ。 今回の鐘のような、作り物と呼ばれる大道具・小道具は、大抵、竹で作られる。そして、こういった作り物は基本的にシンプル。 「能には幕もないし、作り物も安い竹を使っているでしょ。これをもって、“能は簡素美”と言う人もいるけど、もともと能楽師って農民より低い地位の人、つまりお金のない人がやっていたから、簡素にせざるを得なかったのじゃないかしら」と、先生。えええっ!そそ、そんなものなの?! 実際の舞台を見て興味深かったことの一つに、「舞台上のあうんの呼吸」がある。これは、「役者・楽隊・スタッフのすべてが舞台上にいる」という能の特徴があればこそ。 例えば、小鼓と白拍子に扮するシテ(主役)の一糸乱れぬ舞。微妙な動きの連続である舞の、その間合いは、同じ舞台で、同じ空気を感じていないと互いにわかりえないのだろう。 また、シテ(主役)の白拍子が落ちてくる釣鐘の中に飛び込むシーン。ここは、緊張感が最も高まる見せ場であるがゆえに、釣鐘を降ろす後見(役者をサポートする人たち)と飛び込むシテの、呼吸の合った演技が要求される。こういった、動きに合図はない。あるのは、互いに「気」を合わせること、それだけだ。 他に興味深かったのは、「能はシリアスで動きがない、というのは誤解だ」という発見。まず、この道成寺では劇中に間狂言というものがある。ここでは、2人の狂言師が釣鐘にまつわる昔話をするのだが、それがとてもコミカルで会場にも笑いが巻き起こった。最後なんか、1人の狂言師がころころ転がりながら退場していくし。。。道成寺のような、緊張感の連続の舞台に、こういった笑いがあると、見ている側も疲れないし、シリアスな部分が一層引き立つ。 また、鬼女となったシテが、釣鐘から出てきてから、僧達の祈祷に抵抗しつつも押し出されていく様は、とてもテンポがよく、動きもダイナミック。僧侶が数珠をあわせながら念仏を唱える姿を、きっと睨み付ける首の動かし方なんか、非常に歌舞伎っぽい(といっても、歌舞伎のほうが後に出たものだけど。。。歌舞伎には、能から採った作品も多い。道成寺も「京鹿子娘道成寺」という作品になっているらしいが、内容は少々違うもののようだ)。 観終わって感じたのは、「結構、楽しめるのね」ということ。生真面目かと思っていたら、笑いがあったり、ゆーっくりしたもので眠くなるかと思ったら、テンポのよいダイナミックなものもあったり。。。今回は、能の台本である「謡本」を片手に観たので、言葉がある程度わかったのもよかったのかな(小さいものなら、売店にて710円で売ってます)。正直、まだまだ眠いシーンもあったけど(近くのおじさんなんか、いびきかいて寝ているし。。。)、前回より楽しめたのは自分でも意外だった。もうちょっと、先生について勉強してみるかな。私の「能のヘレンケラー症候群」から脱出への道はまだまだ続く。。。 *能を知るサイト:能楽協会* 能楽師で構成されているHP。能楽の歴史、各役、演技法、装束、楽器等の解説が詳しく載っています。基礎知識を知りたい方にはお薦め。 |
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