その32(室礼):室礼で遊び心やコミュニケーション溢れる空間を作り出す
久々の和散歩

うちの萌ちゃんももうすぐ、1歳7ヶ月。日中は気がつくとすぐどこかに行ってしまうので、ずっとべったり。夜は夜で、いまだ3回ほど起きるため、なかなか熟睡できない。月齢が増すと、かわいさも増すが、疲れも増してくる。と、日常生活にとかくうるおいがなくなる。
あー、こんなんじゃ、いけない!!
久しぶりに心の潤いを求めて、和散歩をしてみることにした。行く先は、東京某所で開かれている、室礼教室。
室礼とは?重陽の節句って何?
室礼という言葉、耳慣れないかもしれない。室礼とは、「季節や人生の節目に、単なる装飾にとどまらず感謝、祈願、もてなしなどを形に、心をこめて盛果に表す。(山本三千・室礼のHPより)」とある。実際は、どんなものなのだろう。というわけで、体験させていただいた。
この日のテーマは、重陽(ちょうよう)の節句。9月9日にある重陽の節句は、1月7日の人日(じんじつ)の節句、3月3日の上巳(じょうし)の節句、5月5日の端午(たんご)の節句、7月7日の七夕(しちせき)の節句と合わせて五節句という。でも、他の五節句に比べて存在感が薄いからあまり知らない方も多いかもしれない。
そこで、まず、重陽とはから始めよう。昔から、日本では(元をたどれば中国)、いろいろな物を「陰」と「陽」に分けて考えた。そして、数においても、奇数を縁起の良い「陽」の数とした。最大の陽数でもある9の重なる9月9日は、このようなことからめでたい日として重んじられ、重陽の節句といわれるようになったそうだ。

また、この重陽の節句は、別名、「菊の節句」とも言われる。これは、中国において菊の花が不老長寿の薬効があるとされ、その菊の花が咲き誇る旧暦の9月9日に、お酒に菊の花を浮かべた「菊酒」を飲んで、邪気を払う風習があったためとされている。お酒の他にも、「菊の着綿(きくのきせわた)」という習慣もある。これは、重陽の前日に菊の花に真綿をかぶせ、重陽の節句の日にはその真綿についた菊の露で体を拭き、不老長寿、無病息災を願ったものだ。
まぁ、前知識はこんなところで置いておいて、実際、室礼において重陽の節句をどのように表現するのかみてみよう。
菊の小手毬に重陽の節句の願いを込めて
「今日は、小菊をたくさん使って、丸いお飾りを作ってみましょう」
この日用意されたのは、白、黄色、深紅3種の小菊と丸いオアシスに小皿。小皿に乗せられた丸いオアシスに、小菊を挿していくのだ。

この日、参加したのは5人。白い菊で十字を描き、花かご風にさしていった人。短めに揃えて可憐なアレンジにした人。なんでもすぐもったいないと思ってしまう私は、長く楽しみたいからと長めに挿していったら、ちょっと大きくなってしまった(花も足りなくなったし。苦笑)。
しかし、
「おおらかでいいですよ。皆さん、それぞれによさがあっていいですね」
と、先生。同じテーマ、同じ素材でも、それぞれ違ったものが出来上がる。そして、出来た先生は、かならず、そのいいところを見つけて褒めてくださる。。。ありがたや、ありがたや。
さて、完成した小菊の飾りは、とっても素敵に仕上がった。が、日本の伝統的な花のあしらいから考えると、ある意味、例外尽くしである。
まず、同じ素材(菊)のみを使っていること。日本の文化では、重ねること(〜尽くし)を好まない。しかし、これには例外がある。それが、「梅」と今回の「菊」なのだそうだ。ちなみに、梅は「生め」に通じ、菊は「長寿・長命」に通じる。そう、共通して、命を尊んでいる。
そして、花を丸く挿していくこと。日本の伝統的ないけばなの世界では、左右対称になるようなバランスはあまり好まれない。しかし、丸い形は、「円満」などを連想させるように、福や祝、そして厄除けに通じる。先生の説明にはなかったが、丸は「球(きゅう)」で9月9日にぴったりだ。このように、同じ草花を扱う伝統文化でも、室礼は形で心を表すことがあるというところに特徴がある。
今回は、自然の産物である菊の花や、「○(丸)」という形で、で長寿や厄除けへの願いを形にしたということなのだろう。
室礼の知恵を日常に取り入れてみよう!
さて、最後に、私たちが、取り入れてみたい室礼のよさを考えてみよう。
まず、思い浮かぶのは、「遊び」。例えば、梅が「生め」につながる、といったような「言葉遊び」。これも、直接的なものもあれば、ちょっと遠い言葉遊びもある。例えば、室礼では、かぼちゃなどの瓜科の植物や、豆類、葡萄等をよく使うそうだ。さて、ここに共通するものはというと???それは、蔓ものだということ。「蔓(鶴)は万代に続く」というように、その繁栄や長寿、何かと何かをつなぐ、といったような意味で使われているようだ。

次に、丸い形が円満をあらわすなど、形からくる連想ゲーム。例えば、かぼちゃはその形から長寿につながるのだが、想像つくだろうか?かぼちゃは別名「菊座瓜」ともいうように、上から見ると、菊の花の形に見える。菊は、長寿のシンボル。加えて、かぼちゃは先ほどの蔓ものでもある。というわけで、かぼちゃはよく使われるアイテムらしい。
昔、受験の時に、「敵に勝つ!」といって、とんかつを食べたりした人、いないだろうか?誤解を恐れずに言えば、そんな形や言葉での語呂合わせを、室内装飾でやるのが室礼なのだ。最近、脳を活性化させるトレーニング本がはやりだけれど、そんな物を使わなくても、冷蔵庫の野菜を眺めたり、花屋の花を眺めながら、語呂合わせすれば、楽しみながら、しかもお手軽に脳を活性化出来るのではないだろうか。「毎日の生活空間に、彩りも添えられるから、一石二鳥ね!」。いいえ、室礼は、一石二鳥どころではなく、三鳥にもなるのだ。
その三鳥目の室礼効果が、「コミュニケーション」。室礼はそもそも人が住んでいる空間(部屋)の中にあって、設える人(例えば、奥さん)が伝えたい心を形にし、そこに集う人たち(例えば、家族や客人)がその心を読み取りながら、言葉を、そして、心を通わせるコミュニケーションのツールなのだと私は思う。季節を思う心、大いなる自然を思う心、家族を思う心、、、いろんな心が、会話の中に、そして、お互いの心の中に広がり、部屋の中に満ち溢れていく。。。なんだか、そんな中なら、きっと心豊かな子供が育つ、家族を取り巻く関係においても、互いを大切にする心が育つ、そんな気がする。
今日は、10月11日。旧暦の9月9日で、旧重陽の節句。ちょっと、部屋に小菊なんか飾ってみてはどうだろう?